輸血前に医師(若しくは看護師)より血液製剤を使用する理由、使用する製剤名と量、良い点、悪い点(副作用)を説明します。説明内容を理解し、使用することに同意される場合は、同意書に署名を頂きます。但し命に関わる緊急時は、やむを得ず輸血後に同意書を頂く場合もあります。
検査で患者様と適合した血液製剤は、使用直前まで管理された保冷庫で保管され、使用時に外来や病棟に搬送されます。搬送された製剤は医療従事者2名で患者様本人のものであることや使用日時、使用量が正しいことを確認します。
患者様に名乗って頂くことでご本人確認を行い、電子認証システムを用いて患者様の識別バンドバーコードと準備した製剤のバーコードを読み取ることにより、確かに患者様が使用する血液製剤であることを確認すると共に、輸血を開始したことを電子カルテに記録します。
最初の5分間はゆっくり輸血を始めます。必ず看護師(または医師)がそばについていて患者様の容体を観察します。
何か体に異常を感じたら、すぐに医師、看護師にお知らせ下さい。
輸血開始から5分間後、血圧や体温を測定し特に問題がなければ通常の輸血速度(5mL/分)にします。
輸血開始から15分後、再度血圧や体温を測定し特に問題がなければそのまま輸血を継続します。
副作用発生時に迅速に対応するため、輸血中は頻繁に患者様の状態を確認します。
輸血終了時に再度血圧や体温を測定します。また電子認証システムを用いて患者様の識別バンドバーコードと使用した製剤のバーコードを読み取ることにより、輸血が終了したことを電子カルテに記録します。
輸血用血液製剤は患者様とABO・RhD血液型同型の血液を検査で適合することを確認して輸血に使用していますが、それ以外の成分は自分とは異なる他人の物です。自分以外の成分が体に入ってくると、人はそれに対抗する免疫機能が働きます。その反応の強弱は人によって異なりますが、ある程度の割合で輸血副作用として症状が現れることがあります。
輸血副作用症状とその発生頻度
副作用の種類 | 原 因 | 症 状 | 発症頻度 |
---|---|---|---|
溶血性副作用 | 赤血球の血液型抗原に対する抗体 | 発熱、Hb値低下、黄疸、ヘモグロビン尿 | 軽症1/1,000回 |
穿刺部分の熱感、悪寒戦慓、発熱、不穏状態、胸部圧迫感、呼吸困難、胸痛、腹痛、嘔吐、血圧低下、ヘモグロビン尿、ショック、DIC、急性腎不全 | 重症1/1万回 | ||
アレルギー反応 | 主に血漿蛋白に対する抗体(多くは原因不明) | 蕁麻疹(数個から全身)、口唇・眼周囲の血管浮腫、掻痒感、皮膚紅潮 | 1/1万回 |
輸血後GVHD | 供血者リンパ球 | 発熱、紅斑、肝機能障害、下痢、下血、汎血球減少症(骨髄無形成) | 最近の報告なし |
呼吸不全(輸血関連急性肺障害TRALI) | 抗白血球抗体 | 非心原性の肺水腫、呼吸困難、低酸素血症、、発熱、血圧低下 | 1/5,000〜1万回 |
細菌感染症 | 輸血用血液の細菌汚染 | 発熱、悪寒、低血圧、吐気、嘔吐、頭痛、呼吸困難、下痢、注射部位の疼痛、胸痛 | 1/1万〜10万回 |
ウイルス感染症 | A型、B型肝炎ウイルス | (各ウィルスによる症状) | 1/30万〜40万回 |
C型、E型肝炎、HIV | < 1/100万回 | ||
循環過負荷(TACO) | 輸血量、速度の過多 | 呼吸困難、頻脈、血圧上昇、心原性肺水腫 | |
鉄過剰症 | 頻回輸血による鉄の沈着 | 心筋症、不整脈、肝臓と膵臓の不全症 |
輸血副作用には国の以下の救済制度が適用されます。
平成16年4月1日以降(再生医療等製品については平成26年11月25日以降)に生物由来製品等を適正に使用したにもかかわらず、その製品が原因で感染症にかかり、入院治療が必要な程度の疾病や障害等の健康被害を受けた方の救済を図るため、医療費、医療手当、障害年金等の給付を行う制度です。